東京太・ゆめ子の漫才「お義母さんとも仲のいいふりをして」の台本書き起こし

お笑いコンビ:東京太・ゆめ子
落語芸術協会所属
1993年結成
ボケ担当:東 京太(あずま きょうた)
ツッコミ担当:東 ゆめ子(あずま ゆめこ)

東京太・ゆめ子の漫才「お義母さんとも仲のいいふりをして」
桂文枝の演芸図鑑より

東京太・ゆめ子「お義母さんとも仲のいいふりをして」

セリフ左:東 京太
セリフ右:東 ゆめ子

いらっしゃいませ。
あのあの…あれだね…
あの…あれだよ。
ここんとこいろんなことが…
だけどあのねあってあの~…母ちゃん。
なあに?
帰ろうよ。
ばか言ってんじゃないよ今来たばかりですからね。
しかしだけど最近思うんだけど月日のたつのっちゅうのは早いですね。
いや~ホントに早い。
俺ねこないだまでね「あれ?こないだだったかな?」と思ってたんですよ。
大丈夫多分合ってる。
あっと思って気が付いたら今日だよ。
あら…でも気が付くだけ大したもんじゃないですか。
いや~でも早いっていえばホント早いですよね。
私たち一緒に暮らし始めて43年もたちますけれどもお正月もあっという間に終わりましたよね。
あら梅よ花よって言ったらもうハナミズキですよ。
そしたらすぐアジサイの花が咲きます。そしたらヒマワリでしょ。
彼岸花が咲いてキキョウが咲いてそしたらすぐあなたね。
紅葉狩り。そいでミカン狩り。
そしたらあらクリスマスだ。
もうすぐお正月。ホントに早い。
ねっ。
いや~ホントにそうですね。
ホントだからあれですよだからあの~そうなんですよ。
だけどね言いたかねえけどね。
言いたいんでしょ?
うん。
あのね女の人っちゅうのはね結婚してだんだんだんだん変わってくるよ。
一緒になったころと今じゃもう大変な違いなんですよ。
あらどう違う?
こう違うのよ。
何を言うんですか。
もううちらね一緒んなったころなんちゅうのは俺がちでねコーヒー飲みたいなと思うの。
思っただけでコーヒーをいれてくれたの。
誰が?
分かんねえんだよそれが。
もう私だって全然覚えがございません。
今なんかねもう何念じても出てこないすよ。
念力ゼロです。
口に出したって出てこないもん。
何を言ってんですか。
だから今コーヒー飲みたくなったらね自分で自分に言い聞かせんの。
「コーヒー!」っつって自分で「はい!」って言うんですよ。
で自分でコーヒーいれて飲んでっと隣で「あれ?私の分は?」って言うのよ。
いやでも奥様方それ普通だと思いません?
ねそうですよね?
だって我々主婦は長い間家族のために掃除して洗濯して御飯作ってきましたよね。
お義母さんとも仲のいいふりをして。
あれふりだったの?あれ。
そうですだからうまくいったんです。
あそうなの。
長年暮らした奥さんのためにお茶1杯コーヒー1杯いれるのが不満でしょうか?
幸せさ。
そうですよねホントにそう思います。
いや~でもちょっとあれですね拝見すると女子が多くてうれしいわ。
若い方私と同じ40代の方。ねあなたと…
少子高齢化の中で。いやいやいや~。
私たちはね高齢者のお仲間に入れて頂きまして。
あの高齢者に見えます?
はい。見た目は高齢者。
で近所では最近高貴な方と呼ばれております。
そう。今ね外歩いてるとね「あ高貴な人が来た」って言うんです。
でも言いました。「いいえ高貴(後期)じゃありません。末期でございます」と。
何だそっちか。
いずれ皆が行く道ですからね。
そうですよ
若い方は婚活。若い社会へ出る方は就活。
私たちは人生を収める終活。
終活。
終活分かる?
終活。そうなんですよ。
「そうなんです」じゃなくて。
だから終活だなと今思ってるから毎週1回はねカツを食うようにしてんの。
トンカツからカツライスからカツ丼。
はいご苦労さま!
それを…
カツを食べて自分に活を入れてるの。
お~頑張ってねはい。それとあと…。
母ちゃん。
何だい?いいから若い…。
ちょっと待って。
これウケないじゃん。
いいわよどういうことよ?
いやこのカツだから活を入れてるったらウケるからやれってあんたがうちで言ったんじゃん。
いいえ。
言っておりません。
これ爆笑…うわうわ~。
何だよ「うわ~」って。
母ちゃん。
うちで乗せといてここで裏切るのかね。
大げさでしょ。自己責任。
自己責任って夫婦ってそういうもんじゃないよね。
いや~甘いですそういうもの。
そうなのそういう言い方すんならいいよ。
今日はもううちへ帰ったって茶わん洗わない。
じゃあいいよ。私御飯作んないよ。
茶わん洗うよ。
そうですそうです。ねえ。
一度昔に「いちご白書」というフレーズがあったの覚えてる?
で私たちは終活白書というものを作ってみました。
どうするかまずお墓をどうするかお葬式はどうするか。
あなたに借金はないか。そういうのを全部まとめてちゃんとやりましょう。
そうです。
終活白書って分かってる?
分かってる。それもやんの?ここで。
何を?
いや終活白書って…母ちゃん。
もう終わったよ何?
ハクション。
言わなきゃよかった。
これは幼稚な…だから嫌だっつったじゃない。
はいご苦労さま。
でもあのあれなんですよ。
最近はねこの優しさがしみじみとにじみ出てるでしょ?
誰に?誰が?私?
はい。
あらま~そうやっぱり。
幸せよ。
あらよかった。
こうやって手つないで出てきて…。
手を引いてきております。
手引かれて出てきて。こうやって漫才も一緒だし帰りだって一緒だしうちへ帰ったってず~っと一緒ですよ。
はあ…。
ぜいたく言わない。
もうこれ以上の幸せないな。
あ~それはよかったこと。
もうせいぜい私たちもね生きても20年か30年なので…。
かなり生きるね。
もちろん!そうですよね?
みんなで頑張らなきゃ。死んだら終わりなんだからね。
そうですよ。だからあれだ…。
そうだね。
母ちゃんね。
「母ちゃん」やめてくれる?
は?
私あんた産んだ覚えないよ。
ごめんばあちゃん。
お~!
ということはあんたじいちゃんだ!
んじゃ何ですか?この漫才はじいちゃんとばあちゃんの漫才?
いいんじゃない?
これがホントの地場産業(じばさんぎょう)。
ねっ。
帰ろうよ。
どうもありがとう。どうもありがとうございます。

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